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3/12(土)公開の劇場版『ウルトラマンX』の監督・田口清隆氏ロングインタビュー!!

ライター:キャラクターランド編集部:江口水基
2016年3月12日更新

 2016年2/1発売の「HYPER HOBBY Presents キャラクターランドVol.5」で掲載した、TV『ウルトラマンX』シリーズで初のメイン監督を務め、明日3/12(土)より全国公開の劇場版『ウルトラマンX きたぞ!われらのウルトラマン』で初の長編劇映画のメガホンを執った、田口清隆監督インタビューのロングバージョンを掲載します。

——『X』のテレビシリーズはご自身の中でどのような評価になっていますか。
田口 今回、キャスティングもオーディションから立ち会わせていただいたり、怪獣のデザインや設定にも関わらせていただいたので、「自分ウルトラマン」ができたと思っています。元々、『X』の最初のプロットが、僕の趣味に合っているというか、「そうそうこういうのがやりたいよね」っていうものだったんですよね。サイバーというキーワードも、エフェクトだったりいろいろなことにうまく応用できました。そういう意味では、やれる範疇でやりたいことはちゃんとできたと思っていて。それに平成ウルトラどころか『ウルトラQ』から『ギンガS』までを網羅するくらいの怪獣を出すことができたし、「ウルトラマン」の1つの決定版が作れたのではないかと勝手に思っています。
——確かに、『X』の中にはウルトラ50年間の振り幅が全部入っている気がします。
田口 監督勢が、自分は『Q』『マン』『セブン』が好きですし、辻本監督は『帰りマン』とか昭和中期派で、坂本監督は昭和後期のウルトラマンがお好きなようですよね。冨田監督は平成初期三部作育ちで、出来上がったものを観てもあの年代の名監督の演出を引き継いでいる感じが色濃く出ていましたし、以降はそもそもアベ監督や坂本監督たちが作り上げてきた世界観だったりしますし。まさに全ウルトラを網羅してたのかなって思います。「『80』は?」ってちょっと今思いましたけど(笑)、僕は80年生まれなので僕が網羅したっていうことで。デマーガはクレッセントにちょっと似てたし(笑)。実際、XioのメカはUGMを参考にしたんですよ。やっぱりすごいじゃないですか、基地の描写が。そこは『セブン』と『80』を参考にしましたね。
——田口監督の第16話「激撮!Xio密着24時」は、一見世界観を壊しかねない作品ながら、実はXioってウルトラマンがいないところで仕事をしているんだということがちゃんと伝わってきますよね。これはシリーズ史上初めてだったのではないかと。
田口 隊員たちだってご飯も食べればトイレも行くんだっていうことはなかなか描かれないじゃないですか。『MM9』も『パトレイバー』も、実はウルトラマンを原点に置きつつ、そういう部分を狙った作品なんですよね。そういう変化球側をずっとやってきたんだから、本家でやらなくてどうするっていうことで。ふざけようと思っているのではなく、この人たちの人間味や私生活をもっと見せたい、と思ってました。本当はアスナの寮へ行って休日を見せるとか、隊長が不思議な人すぎるからどんな人か見せるとか……「24時」で更に不思議な人になってしまったんですけど(笑)。隊長に関しては15話「戦士の背中」でちょっとプライベートを描きましたが、ああいう私生活を描くものは今後もやりたいですね。今回は私生活っていうよりはしょうもない事件を追いかけているのがメインになってしまいましたけどね(笑)。でも、大地が普段からスパークドールズをかわいがっている描写は最終回での共闘に繋がるし、副隊長には娘がいて時々電話をしているっていうのをシリーズ構成の皆さんがちゃんと書いてくれていたからこそ、実はあんなところに後半戦への伏線が張ってあった、っていうことになっているんです。
——あの話の中で、ヒーローの戦闘シーンをどう見せるのか非常に興味がありました。
田口 変身過程は見せないといけないのでその部分だけはドキュメンタリー風じゃなくなってしまうんですが、怪獣やウルトラマンが出たっていうシーンは人間目線を常に狙っていて、怪獣が出てるんだからカメラを止めるわけがない場面をどう見せるかっていうときは、『クローバーフィールド』だったり『第9地区』みたいな見せ方にしようと。どれだけカットを割らずに、特撮だけではなく本編で撮った画の中でも怪獣を見せられるかっていうのが好きなので、そういう実験はしました。普段だと許されない部分もあるんですが、結果成功して1つの前例を作ったので、今後もああいう攻めた画をやりたいですね。
——最終回はグリーザが印象的でしたね。
田口 僕の中ではウルトラマンに限らず、ゲームにしろ何にしろ、「ラスボス」の総合的な漠然としたイメージがゼットンだったんです。でもこの年になってから初マンのゼットンを見直すと、頭の中で最強になっていたほど、強くはなかったんです(笑)。それはよく言う「脳内編集」で、その後に観たいろいろなものとくっついてすごくなってるんだっていうことに気づいて、じゃあそれをぶつけようと。だからゼットンそのものを再現したのではなく、子どもの頃に観たゼットンに対するトラウマというか、頭の中に出来上がってた、ゼットンをコアにしたラスボスのイメージそのものを形にしました。グリーザを見て「すごいラスボスだ」と思った子が、30歳になったときに観直しても「やっぱりすごかった」と思えるようなラスボスにしてやろうと思ったんです。
——グリーザの怖さって従来のウルトラマンのラスボスとはちょっと違う、気持ちの悪い強さというか。
田口 CGのでかい奴と飛び回って戦うとかは合成の制限もあって不可能なので、肉弾戦なのに強いというのはどういうことか考えて、「とらえどころがない」という方向に走りました。まずは動き。実はあれは動きやすそうで動きづらい構造で、肩が上がらないんです。二の腕から下で手を動かしてるんですよ。でも人間らしい動きを制約したことが結果的にプラスになったかなと思っています。後ろ向きに走らせて逆回転でやってみようとか、いろいろスーツアクターの方と話しあって、結果的に暗黒舞踏みたいな感じかなと。かつそれを合成でひたすらいじり倒す。アベ監督がラグビー回(第9話)で、周りを遅く動かして1人だけ速くして、それを早送りにするとすごい速さになるっていうのをやっていたので、あれを立ち回りに応用して、グリーザは時間の概念すらおかしい、みたいな感じを表現しました。それを長回しの立ち回りに組み込んで、さらにCGの戦闘機も飛ぶし基地のミサイルも撃つし爆発するし、みたいなことをやって、自分でもかなりお気に入りのワンカットになりましたね。あれで「グリーザやばい、この人一発も攻撃が当たらない」っていう強さを表現できたと思います。それから、グリーザの光線は出すたびに違う、どこから出るかもわからないっていうことにしてたんですが、操演の根岸さんが火薬を毎回変えてくれて、着弾するたびに違う爆発が起きてるんですよ。だから合成部さんにも毎回違うところから違う光線を出してほしいと頼みました。音響効果さんにも全部違う音をつけてくださいって。それはグリーザは本来「無」だから、見る側の脳がそう認識してるだけなんだっていう裏付けにならない裏付けもあって、そういう怖さも狙っています。設定を考える渋谷さんが光線全部に名前をつけるのが大変だったと言ってましたが(笑)。僕は川北紘一監督のゴジラで育っているので、尖ってるところ光ってるところからは何でも出るっていう特撮理論が根付いていて、その総決算だとも思ってたんです。実はタイミング的にも、川北監督への追悼、川北ゴジラへのオマージュだったりする部分があって、怪獣に逆光を当ててシルエットを出したり、どこからでも光線を出すっていうところだったり、惜しみなく全面的に川北監督の演出を取り入れてやってみました。
——でも21話であそこまでグリーザの強さを見せつけると、22話でどう収拾をつけるんだろうと思いました。
田口 観る人によってはグリーザの最終形態が弱く感じてしまうでしょうね。あれは理屈としては、1回エクスラッガーを飲み込んでしまったから、「無」じゃなくなってしまった、という設定にしてもらいました。エクスラッガーには、“想いを形にする力”があって、無を有にすることができるんです。だからアスナが強い想いをもってあれを放ったからこそ、無の世界に落ちていた大地がもう一度有になったり、グリーザがエクスラッガーを取り込んだのをきっかけに「無」ではなくなりそれまで全く当たらなかった攻撃がグリーザに当たるようになってるんですよ。さらに怪獣を飲み込み過ぎてしまって、無に返せず貯め込んでいるので、消したはずの怪獣の力を使ったり、最後にエクスラッガーを刺されたせいで中から全員の想いが吹き出してしまって、逆にそれを取り込んだエックスの攻撃でふっとばされるっていう、一応映像表現だけでそれを描いたんですよね。でもそれを聞いた方から「それを本編で説明しないでどうするんだ」と言われちゃいました(笑)。いやいや、『2001年宇宙の旅』を観たことがないのかと(笑)。台詞で全部説明すると思ったら大間違いですよと。読み解く材料は全部用意しておいたつもりです。
——そういう意味ではエクスラッガーって結局何だったかということも明かされないまま終わりますよね。もともとエックスと所縁があるものではなかったんでしょうか。
田口 なくてもいいんじゃないかな。スパークドールズがどうして存在するのかも説明してないけど、おそらくこの世界のエックスの前任者のウルトラマンが怪獣だらけだった地球に来て、それをスパークドールズに変えて、そのほとんどを日本海溝に埋めていった、っていう設定が僕の中にはあるんです。だから日本海溝に一番多いという。エクスラッガーも、その有史以前にあったであろう光の巨人の戦いの中で、前任者が置いていったものなのかなと。Xの続編をやらせてもらえるなら描きたいですね。そのうち小説でも書こうかな(笑)。


ザイゴーグは徹底的に「劇場版らしい怪獣」に。

——劇場版のストーリーは、どんなどころから作られていったのでしょうか。
田口 最初に僕が提唱したのが、テレビ最終話は『X』のシリアスかつ縦軸の話を回収したから、劇場版は縦軸一切なく、初めて観た人が楽しめる王道エンターテイメントにしようと。僕と脚本の中野貴雄さんのコンビって遊び回をやるコンビだと認識しているので、遊び回みたいな劇場版にしようと思いました。実は最終回でXioは本当はもっと活躍するはずだったんですよ。自分のデバイザーから今までの5人の客演ウルトラマンのカードを送って、エックスが次々にその技を放ってグリーザを砕いていくみたいなことが決定稿に書いてあったんですが、尺と合成カット数の問題もあったんですけど、Xioとエックスとの共闘は全部劇場版に回そうということで全部カットして、エックスと大地と怪獣たちの話を決着させることにしました。そして、劇場版は王道の怪獣映画にしようと。ストーリーも『キングコング対ゴジラ』や『モスラ』のような、「そこにあったものを持って帰ってきたばかりに怪獣が大暴れする」っていう王道の話なんです。だから敵の怪獣も徹底的に劇場版らしい怪獣にしようと。CGやグリーンバック合成でできた巨大怪獣じゃなくて、殴り合える限りの一番でかい怪獣、VSゴジラシリーズの敵怪獣、スペースゴジラやデストロイアくらいの大きさの怪獣という感じですね。
——あのグリーザの次の敵ですから、強さをどう表現されるのか気になりますね。
田口 グリーザは取り付く島もない強さだったんですが、ザイゴーグは「ただ強い」んです。パンチ一発でウルトラマンが吹っ飛ぶ。ウルトラマンが近づこうにも棍棒が危なくて近づけない。距離をとったら今度はすごく強い光線を吐いてくるんですよ。この2つがあれば強いんですよね。子供目線に立ち返ったときに、VSゴジラシリーズではデカイCG怪獣が出てないのに、敵怪獣がちゃんと強かったんです。だから今回はいっぱい怪獣を出すのはやめようと絞りに絞って4体。そのうち3体は子分で、とにかくザイゴーグっていう新怪獣がとにかく強いんだと。『ゴジラ対●●』の「●●」がとにかく強いんですっていうのにしたいなと思って。
——デザインの狙いは?
田口 地獄の大王、地獄最強の鬼なんです。右手が棍棒で背中に針の山がついてて、尻尾がのこぎりで鬼の角がついてる。八大地獄の中でも一番やばい「無間地獄」に、64の目を持つ鬼がいるんですが、ザイゴーグも三つ目の後ろに背中まで点々とついているのが全部目っていう設定なんです。それから、合体怪獣というわけじゃないけど、モチーフとしては、目がバルタン星人で、顔がネロンガで胸にグリーンモンスがついてて、腕や脚のヒダがレッドキングで、背中がバランで尻尾がスフランなんですよ。背中だけ東宝怪獣が入るんだけど(笑)、針の山ということですね。造形部さんいわく、赤い皮膚はデストロイアらしいです(笑)。要は好きな怪獣の格好いい部分を全部ぶっこんだ最強感です。
——ゲストのウルトラマンもメインは初代マンとティガだけにしぼりましたね。
田口 歴代でも一番人気のある2人ですからね。僕もエックス以外で好きなウルトラマンはと言われたら、初代マンとティガなんですよね。話も、バラージの話とティガの第1話のピラミッドの石像の話がすごく親和性があって、2つの世界観を合体させて主軸にした時点でこれはいけると。
——全体の演出テーマは?
田口 僕が小・中学校時代に毎年観るのが楽しみだった怪獣映画の感じにしたいなと思っていて。見終わった子供たちが外で怪獣ごっこしたくなるような映画にしたいというのが命題でした。クライマックスはウルフェスのライブショーを意識してるんです。今考えるとお姉さんに「せーの」って言わせて、子どもたちに「頑張れ!」って言ってもらうようにすればよかったと思うくらい、ウルフェスのあの感じです。それと、ウルトラマン3人と人類の兵器3機と怪獣3体っていう大乱戦がありますが、そこは本来僕が一番やりたかったことで、やるべきこととやりたかったことを両立させられたかなと思っています。試写で観た方々が「お腹いっぱいだ」って言ってましたし、これでもかっていうくらい食わされるクライマックスになってますよ(笑)。
——本編ゲストのお2人のキャスティングについては?
田口 吉本多香美さんは、マンとティガがゲストなら、両方の遺伝子を継ぐ唯一の人ですから、初めから誰からとなく名前があがりました。ただ、レナ隊員にするのか、関係ある誰かにするのか、となったとき、最終的に全く関係ない人にしようということになりました。ダイゴの娘にしようかとかもあったんですが、独立した世界観にしようということで。黒部進さんに声の出演だけお願いしようとかいろいろな案もありましたが、あまり客演に寄った映画にするのではなく、エックスの世界に集中したかったんです。でも、ティガファンの人なら「今レナ隊員の顔をした」って感じる場面があるかも知れませんよ(笑)。
——それも観客が読み解く楽しみかもしれませんね。
田口 マイケル富岡さんは、最初から脚本に「カルロス黒崎」っていう役名があって、マイケル富岡さんみたいな感じの人だよ、って言ってたんですよ(笑)。いわばイメージキャストだったんです。
——『ダイナ』に出演されているご縁もありますしね。
田口 実は特撮に縁がある方なんですよね。ヤキソバンだし(笑)。
——他に、先に知っておいて観に行ったほうが楽しめそうなことは?
田口 最終回から半年後くらいが舞台だと思っているんですが、マスケッティが3台装備されているんですよ。なので初めてスカイ、スペース、ランドのマスケッティが同時に戦うことになります。個人的に一番キモだったのが、その3台プラス、アスナはバズーカ担いで白兵戦で、ウルトラマンとエックスとティガ、敵怪獣が3体で、全員が一斉に戦うシーン。それをまた1カットでやってしまいました。そのほかにもテレビシリーズで実験した特撮描写を総決算として突っ込んで、あの手この手が全部詰まった1本になってるので、それはぜひとも注目してみてもらいたいです。
——最後にファンの皆さんにメッセージをお願いします。
田口 2013年の『ギンガ』から続くTVシリーズも3作目を迎え、認知度も年々上がってきて、子どもたちの間でもウルトラマンを好きで観てくれてる人が増えてきていると思います。やはり継続の力だと思います。そんな中、今回の映画はここ3年の1つの集大成だったりすると思うので、ここで多くの方々に観ていただければ、ここから先の励みになるし勢いもつくだろうなと。そういう意味で、『X』の劇場版は試されるところだなとドキドキしております。だからぜひウルトラファンや特撮ファンの皆さんも一緒に盛り上げて、楽しんでくださるとうれしいです。

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